・表紙
・Story
目の前にある飴玉のようなソレと、差し出した相手の顔とを交互に見やってナルトは言われた意味を考えあぐねていた。 「早く口に入れちゃってよ、ナルト。ほら、サスケ君も」 ごちゃごちゃと説明されても分からないような機器に埋め尽くされたここは、医療忍術研究班研究長春野サクラの研究室だ。これらをどければナルトの部屋よりも広いだろうと思われるここで、日夜サクラは研究に明け暮れている。 ニコニコと人好きのする笑顔をふりまき、昔馴染みもとい、研究の被験者たちを彼女はうながした。 「えーと、サクラちゃん。もっかい説明してもらってもいいってば?」 かろうじて顔に笑顔を貼りつかせたナルトが、再度の説明を請う。 その瞬間ぎろりと睨まれ、ナルトは首をすくめて縮こまった。その目がこれで最後だからね、と無言で語る。もう一度同じことを言おうものなら無理やり口を開かれ、そこに転がる飴だか丸薬だかを突っ込まれそうな勢いだ。 しかし、そんな白衣を着たらマッドなサイエンティストに変貌してしまうサクラを前にナルトは聞かずにはおれなかった。自分の覚えている限りで今回の実験は断トツに度が過ぎているのではなかろうか。自分の聞き違いであることを希望的観測の極地で願うのだが、耳が遠くなるにはまだまだ早い23歳の男盛り。その確率は限りなくゼロに近かった。 ナルトは隣でだんまりを決め込んでいるサスケはあてにはならないと早々に切り捨て、びびりながらも果敢にサクラへの反旗を翻す第一歩を試みたのだった。 「だから、こっちの白いのが陽のチャクラ丸、こっちの黒いのが陰のチャクラ丸。知ってのとおり陽は陰が、陰は陽があってはじめて一つの要素となりえるから、双方がこれを体内に取り込むことによって、互いが1つになるわけ」 「要するに、オレとサスケがこれを飲んじゃった場合……」 「二人がひとつに融合するってことね」 ナルトの言葉尻をとらえてサクラは嬉々として、そら恐ろしいことを語る。 「ぜってぇヤだってばよ!何でオレがサスケなんかと!」 先ほどよりも簡素かつ率直な彼女の物言いに、ナルトは顔に熱が上がってくるのまぎらわせるように声を荒げることしかできない。 (サスケとひとつになるとかって、そりゃそうゆう意味じゃねぇのは分かってっけど!) ナルトは反れる思考を正そうと軌道修正するのだが、 「オレもこんなヤツとはごめんだ」 そっぽを向いて拒否るサスケに、ナルトは条件反射でつっかかってしまう。 「なにをー!サスケ!」 「なんだよ」 ふてぶてしく見下ろしてくるサクケの胸倉をナルトがつかもうとしたその時、 「二人とも今日はそこまでにしてくれる?」 いつもの小競り合いに発展しそうだった二人をサクラは笑顔で止めに入った。その裏側にあるものを瞬時に感じ取ったナルトとサスケは、互いに向き合っていた体を無理やりサクラへと向ける。二人とも互いよりも敵に回したくない相手というのが目前の女性であると白状しているようなものだった。 「サスケ君は白い方を、ナルトは黒い方を飲んでね」 ですからまだ一言も飲むとは言っていませんがサクラさん、とナルトは心の中でむせび泣く。サスケといえば普段と変わらずの無表情だが、十中八九ナルトと似たり寄ったりであることは予想がついた。ナルトほどでないにしてもサスケも十分彼女に弱かった。 サスケとひとつになるだなんて勘弁ごめんだが、美貌も腕力もめっぽうあがったりのサクラに再起不能にされるというのも気が進まない。それに結局ボロボロにされた後にソレを口に放り込まれるのだ。それならば、最初から素直に口にした方がマシというもの。結局サスケとひとつになるということに変わりはないのだ。 そうやってサクラの被験者になるという毎度お馴染みの思考回路にはまるのだが、もうこれは惚れた弱み、男の弱み。ナルトは腹をくくる。 「オレってば白い方がいい。なんか黒いのは苦そうだし」 「味なんて両方とも一緒のようなもんよ。それにこれにも意味はあるんだから黒を飲んでよね」 「えー」 「えーじゃないの。サスケ君は火の属性で陽。風のあんたは陰ってワケじゃないけど、そもそも風は相手の属性によって変動するから火が相手の場合は陰。ついでに雷も風相手だと陽で、あんたはまたも陰。分かった?」 「分かんねぇけど、オレってばとにかく陰ってことなんだろ」 「そうゆうこと。あんたが陰ってのも意外な気がするけど、お色気の術だっけ?あれも女で陰よ」 びしりと決め付けられ、ナルトはしぶしぶ黒いチャクラ丸を手に取った。飴玉のようなベタつきはない。 「で、融合ってどんなになるの?すげぇ強くなったりするアレ?30分だけ合体できたり、気を上手く合わせらんなかったら失敗して弱くなっちまったりする……」 「言いたいことは分かるけど、近からず遠からずってところね。だってどうなるかはこれから調べるんだから」 だから二人に来てもらったんでしょ?と、さも当たり前のように彼女はのたまった。 「せ、せめてどのくらいの間、合体してんのかくらい分かんねぇとヤバくない?」 ナルトはかなり乗り気のサクラを前に頑張ってみる。 「このくらいの量じゃ、もっても1時間ってとこよ。反対に1時間は持たせて欲しいの」 さぁ早く、と続きそうなサクラの押しに、ナルトも観念したのか陰のチャクラ丸を口にほうり込む。甘くも苦くもないそれをどうにかこうにか飲み込んだ。特に体の変化はない。 「ほら、サスケ君も」 「だからオレはごめんだと言ってるだろう」 「サスケ君。別に私がやっても構わないのよこの実験。私の変わりにデータをとってくれるんだったらだけど。そんな難しいことじゃないわ。まずは時間とチャクラの内包量と放出量の検出。あ、サスケ君は写輪眼でチャクラの流れが色で見れるのよね、そしたら……」 「分かった。オレがやる」 まだまだ続きそうだったサクラの言葉をさえぎって、サスケは渋々実験協力を承諾した。いくらこの研究の発端者とはいえ、サクラ本人にさせるわけにはいかない。 しかし、これがこの後、大きな変化を二人の間に及ぼすのだが、この時の二人にそんなこと想像などつくわけがなかった。 「チャクラはまず一定に保ってね。どこかお互い触れてる方がいいみたいだから。そうね、手でも繋いでたらいいんじゃないかしら」 白衣をまとった研究長は被験者二人を前に指示を送る。地下の実験室に押し込められた、うずまきナルト上忍、うちはサスケ上忍はスピーカーから聞こえた指示に直ぐさま顔を歪めた。 「それ、マジでやんねぇとだめ?」 無駄に広く作られた白い空間にナルトの情けない声が響く。床と壁の境目さえも判別つきがたいほど白く何もないそこは、ナルトもサスケも何度か訪れたことのある場所。今と同じようにサクラの視線を感じながらの実験はお互い慣れたものだった。しかし、二人一緒に閉じ込められたのは今回が初めてで、遠近感覚をも狂わす特殊な空間は、互いに近寄りがたい雰囲気を作らせていた。 それに業を煮やしたサクラの指示であったのだが、ただでさえ尻込みしてしまうような実験内容、ナルトが抵抗したくなるのも致し方ない。もちろん、そんな些細な男心など到底分からないサクラは、ナルトの訴えも景気よくはたき落とす。 「無駄な時間は使いたくないのよ。いいでしょ手を繋ぐくらい。どうせ今から手ぇどころか体ごとひとつになっちゃうんだから、あんたとサスケ君は」 情け容赦ないサクラの言いようにナルトは傷心の目をサスケに向けた。物言わず小さく首を振った片割れ予定の様子に、ナルトは小さくため息をつく。 すっと迷いなく差し出された左手がさらにナルトの羞恥を誘った。 「早く終わらせるぞ」 そう促されてナルトも覚悟を決める。 恥ずかしさを払拭させるためにわざと力を込めてにぎってやると、すぐさま同じだけの強さでにぎり返された。 その仲睦まじい様子に気を良くしたサクラがさらなる注文をつける。 「あ、どうせならもう一方もつないでちょうだい。円を作る方がチャクラが循環しやすいから」 「もう、何でもやりますってばよ!」 ナルトはやけくそのように、あいていたもう片方のサスケの手つかんだ。サスケの眉が一瞬寄せられたが、それには知らん振りをしてナルトはサスケの前へと移動する。向かい合って互いの手を取り合う自分たちは、もはや直視しがたい後景だろう。しかし、そんな彼らを直視どころか設置されたカメラで四方八方あらゆるアングルで見れるサクラは、ナルトの羞恥などかまうことなくテキパキと指示を与えた。 「じゃあ、二人ともチャクラを練ってお互いの様子をみながら少しずつ高めていって」 「はーい」 行儀よくも投げやりな口調で返事をしたナルトは、言われたとおりチャクラを練り始めた。サスケのチャクラを感じ取るために目は閉じておく。しかしこの距離、この体勢。やはり目を開けておくのは気恥ずかしさが先立ったというのもあったのだが。 (あ、なんか腹の方があったかいかも) それからすぐ両手にサスケの体温を強く感じる。徐々に高まる馴染みのチャクラに、ナルトはシンクロさせた。追いかける、そして追い抜き、同調する。 最初に熱を感じた。次に熱の低いところがひどく気になって。 まるでそこが自分の体ではないように思ってしまったのは、熱の先にあるサスケのチャクラこそが己のものだと判断してしまったからかもしれない。 熱はどこまでもあがり、呼吸は深く重くなる。ただ鼓動は異常に早く打ちつけ、危機感にも似た感覚をおぼえさせた。 時間にしては十数秒。徐々にそれは始まった。 (……え?) 今まで感じていたサスケの手の感触がなくなった。にぎる確かさも、返される強さもなくなって、ナルトは目を開ける。 「うわ!?」 飛び込んできた異常な後景に思わずナルトは叫んでいた。自分の手首から先がない。それはおおよそ間違った見解ではなかったが、実際はサスケの手首より向こう側にかろうじてナルトの手は存在しているようだった。あまりの衝撃に向かい合う男の顔を仰ぎ見る。ナルト同様、サスケもこの状況には驚きを隠せないらしく、すぐ近くにある目は見開かれていた。この後、ついサスケの顔を伺ってしまったことをナルトは激しく後悔することになる。 同化が始まったのだ。 (ちょっと待ってッ!) 一切の体の自由がきかなくなってナルトはこの実験の中止を切実に求めていた。しかし、中断の言葉がナルトの口からでることはなく、感情とは裏腹に溶けるような、引きずられるような感覚は速度をあげる。すでに両肘から下の感覚はない。 さらに固定されてしまった視線は黒いサスケの瞳からずれることなくあって、徐々に近づくそれに自分が映っていることまで知らせた。元々あった無意識の顔の傾きが、どうにもナルトにアレを想像させる。 (こ、このまま近づけばキスしちまう!) 互いの鼻がぶつかって、いよいよナルトは心の中で悲鳴をあげた。しかし何かを感じるより早く、ただ熱だけが己の中に侵食してくる。 (気持ちわりぃ……) もう、ナルトには腕の感覚も、立っている感覚もなかった。熱と、呼吸と、鼓動だけを感じる。でもそれは自分のものなのかサスケのものなのか、限りなく曖昧で、頼りない。それは己の存在を希薄にさせるものでもあるのだが。 (でも、お前だったら……) 最後にナルトの瞳が捕らえたのは、苦しげに歪ませたサスケの顔だった。 それは、サクラの目の前で突如として始まった。 手元にあったチャクラの内包量を測る装置は徐々に数値を上げ、観測不能となるその手前で大きく数値が乱れた。それを横目で確認しながらも、サクラは興奮に身を乗り出す。 「すごい……」 無意識にもれた感嘆の言葉はサクラ自身の耳には入っていなかった。今や彼女の意識は超強化ガラス越しに繰り広げられている奇跡のみに向けられている。この後景をほんの少しでも見逃すまいと瞬きも忘れて見入っていた。 二人が隙間もなく重なってすぐ、無数の糸を引くような光が出現した。緩やかに二人を包むようにそれは大きく広がって、あるひとつのカタチを形成する。波打つ細い光は猛々しくその存在を主張し、圧倒させた。 ふたつの存在がひとつとなる。それはただ足し算をするような単純な答えを導き出すのではなく、空間をゆがめ、時空をも変換させる奇跡の最終形態だった。 「まさか、九尾の姿をかたどるなんて」 流れるような美しい光を振りまく尾は数えて9本。優雅に揺れるそれらは広がる様もあいまって圧倒的な存在感と強烈な印象を見るものに与えた。視覚に訴える快感とはこのことを言うのだと、サクラは彼らを凝視しながら遠い意識の中でそう断定する。ただ鋭くつり上がった青とも赤とも色を変える瞳が、見る者に恐怖を覚えさせた。 しかしそれも一瞬のこと。カッと光が弾けたと同時に二つの塊がその中心から放り出されるようにして転がり出てきたのだ。 「いって!」 「……ッ」 実験室に設置されている高性能集音装置が二つの声を拾い上げる。頭上にあるスピーカーから聞こえるそれに、一種夢見心地になっていたサクラははっと意識を浮上させた。 「二人とも大丈夫!?」 常の彼女であれば計測時間が足りないと文句のひとつやふたつ言うところなのだが、九尾という鮮烈にも圧巻なカタチを形成したチャクラの塊を見た今、多大な畏怖からか二人の状況がひどく気になった。 全速力で走ったあとのように肩を上下させる二人は、一向にサクラの問いに答える気配はない。互いに見つめあったまま動こうとはしなかった。 「ナルト!サスケ君!」 痺れを切らして声を荒げるサクラにようやくナルトが顔をあげた。どこか苦しそうに胸元を握り締めている手は、力を入れすぎて白くなっている。目があった瞬間、彼は立ち上がり一つしかない扉に向かって走り出した。 「サクラちゃん、開けて!」 切羽詰ったように扉の前で叫ぶナルトにサクラは手元の開閉ボタンを押して施錠を解除する。体で押すようにして出てきたナルトにサクラは駆け寄った。 「急にどうしたの、ナルト。気分でも悪くなった?」 体調がおもわしくない割りに血色の良い顔色をしているナルトに、サクラは問いかける。 「な、何でもない!」 「だったら、ちょっとそこに座ってて、答えられる範囲でいいから質問があるの。サスケ君も動けるようならこっちへ」 開け放たれた扉に向かってサクラはサスケに声をかける。立ち上がっていたサスケがゆっくりこちらに向かってきた。 「サ、サクラちゃん、それって明日じゃダメだってば?」 「何言ってるのよ。後からじゃあんた忘れるに決まってるでしょ」 「絶対ぇ忘れねぇからオレだけ明日にして!」 そのまま走り出してしまいそうなナルトを逃がすものかと、とっさにサクラは腕をつかむ。 「じゃあとりあえずは、これだけ答えて!同化した時の感覚は?苦しいとか痛いとかだったら実験は続けられないから!」 その言葉を聞いたナルトは瞬時に顔を真っ赤にさせた。そして一度、歩いてくるサスケを見やり、さらに頬を紅潮させたのち観念したのか、ナルトはしどろもどろになりながらも答えようとする。 「えーと、な、なんか、その……よく分からねぇんだけど、めちゃくちゃ気持ちが……」 「気持ちが?」 言いよどむナルトにサクラは先をうながす。言うまで離すものかとつかむ手に力を入れた。 「な、なんかよく分からねえけど、めちゃくちゃ気持ち良かったんだってばよ……!」 やけくそのようにナルトが告白する。そのあまりの言いようにサクラは思わずつかんでいた手を離してしまった。もちろん、それを見逃すわけがなく、ナルトはきびすを返すと脱兎のごとく検査計測室から出て行ってしまった。目に涙がたまっていたように見えたのは気のせいだろうか。 呆然とナルトの背中を見送っていたサクラに、ちょうど実験室から出てきたサスケが声をかけてきた。 「サクラ」 ナルトと違って随分憔悴しているように見える彼に、サクラは近くの椅子に座るよううながし、自分は腰辺りまである計測器にもたれかかった。 「顔色が悪いようだけど大丈夫?」 「ああ」 片手で顔を覆って俯く様子はとても大丈夫そうには見えなかったが、彼が大人しくここに座るということは、サクラの質問に答える気で何か言いたいことがあるのだろうと想定する。 「ナルトにも同じ質問をしたんだけど、同化した時の感覚はどんな感じだったのか答えてもらっていい?苦痛があったり嫌悪があるんだったら実験を続けることはできないから」 ナルトよりも随分落ち着いた感のあるサスケの様子ではあったが、だからこそサクラは彼の心中を危惧する。 「さっき聞こえた。それよりサクラ、これは続けるべきじゃない」 断定口調でもってサスケは言う。 「サスケ君はどうしてそう思うの?」 「体がひとつになるだけじゃない。あれは精神も同調しようとするからだ」 「思ってることが筒抜けってことかしら」 「それだけじゃない。記憶も感覚もすべてだ。言ってただろう、あいつは快感を感じると。体も心もすべてを共有しひとつになる。それが何を意味するか分かるか?」 顔を覆っていた手を離して、サスケはサクラを見上げた。その瞳の奥にあるくすぶりを瞬時に悟る。 「意識の交感というわけね」 「ああ、誰とでもできるもんじゃない。さっきは驚いたナルトが同化を解除したが、あのまま続いてたらオレたちは生まれる前から一緒の双子よりも互いを知り合うことができただろうな」 そう言うとサスケは顔を歪めた。 「ナルトが解除したってことは、サスケ君には同化を解くことはできないの?」 「できない。その代わり本体をコントロールできるのはオレらしいが」 「私がもう一度ナルトと同化してって言ったらサスケ君どうする?」 サクラは真っ直ぐサスケを見据え、息苦しいとも感じる空気の中そう問いかけた。酷いことを言っている自覚はある。彼がそういったことを嫌悪する性質であることは分かっていた。しかし、サクラとしては来たる日のためにどうしても成し遂げておきたい事柄でもあったのだ。 「お前は言わねぇよ」 少しの沈黙の後、サスケはそう返してきた。言葉の内容はサクラを尊重しているようだが、暗に制止を意味しているのがうかがえる。 「買い被り過ぎだわ」 それを正しく理解した上でのサクラの言葉に、サスケはすっと目を細めた。 「お前の気持ちには答えられない。オレはあいつと同化なんて二度とごめんだ。あいつがどんなに快感を得たと言っても、オレには嫌悪でしかない」 「それは、サスケ君の本心なのかしら」 「当たり前だ」 「そう。ならもう言わないわ。でもここにあと残り二つあるの。ひとつはサスケ君に、もうひとつはナルトに渡そうと思ってるんだけど」 「サクラ」 サスケは反論の意味を込めて名を呼んだ。 「それくらいは許してよ。無理強いはあきらめたんだから。私たち対等でしょう?ひとつ目は私が使ったの。残りのひとつをサスケ君が処分するっていうんだったらそれでかまわないわ」 「あいつの分は?」 「さあ、ナルトだったらどうするかしら。飲んだらどうなるかは、もう分かってることだし。その時サスケ君を選ぶのか、それとも他を選ぶのか。それは私にも分からないわ。でも私はあんなにも強くて恐ろしい……でもキレイな生き物は、サスケ君とナルトじゃないと作れないってことだけは分かるの」 「お前こそ買い被りすぎだ」 サスケの言葉に「本心よ」とサクラは返すと、目の前の戦友に微笑んでみせたのだった。
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