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~Ver. 8






カーテンの隙間から明るい日差しを感じて、サスケは目を覚ました。隣にいるはずの彼がいない。
だるさを感じる体を起こし、辺りを見回した。人の気配はする。ただ、それはあまりに馴染んだ彼とは違っていた。
部屋の端に無造作にたたまれていた服に腕を通す。続いてどこからか、淹れたてのコーヒーのにおいがした。
 身支度を整え部屋を出れば、部屋の主が笑顔で振り向いた。
「よく眠っていたね」
 己の予想の的中に何の感慨もなく、サスケは知りたいことだけキッチンに立つ男へと問いかけた。
「ナルトは?」
「いきなり本題かい?コーヒーを淹れたんだ。君も飲むだろう?僕からも話しておきたいことがあるし。ミルクと砂糖は?」
 うんざりしながらサスケは首を振り、リビングのテーブルへと席についく。見計らったようにサスケの前にコトリとマグカップが置かれ、サイも席についた。サスケは見覚えのあるそれに手を伸ばす。
「それ、ナルトのだけど良かったよね?」
 ああ、とだけ返して湯気の立ち上るそれへと口をつけた。やや薄めに作られたそれが、すんなり喉をとおる。
 目が覚めて、ようやく意識して部屋を見渡したとき、この部屋が元カカシ班の一人である上忍サイの部屋であるとサスケは気づいた。部屋の隅にある絵を描く道具たちと、ナルト、サクラ、カカシといった肖像画があったことからサスケにそうとさせた。
 ずっとサスケはナルトがここで新しくできたらしい看護師である彼女と、暮らし始めたのだと思っていた。自分から逃げるために。
 この部屋の主が誰であるか知った時、それは噂でしかなかったのだと、遅ればせながらサスケは気づいたのだった。
「サスケ君。ボクも詳しくは知らないんだけど、多分君よりはナルトのことを知っていると思うよ」
 サイの言葉に少なからずサスケはむっとする。
「ナルトはどこに行ったんだ?」
「ああ、ナルトは任務だよ。ちょうどボクが帰ってきた時に出る用意をしてたから」
 なら用はないとばかりに、サスケがカップをテーブルに置き、席を立った。
「ナルトから伝言を預かってるんだ。もう少し僕に付き合ってくれないかい。ナルトが君のことをどう思っているかを君は知りたくはない?」
「ナルトがお前に言ったのか?」
「そうだね。まぁ、ずっと近くにいたから、もしかしてってのはあったけれど、ナルトから話してくれるのを待ってたから聞かなかった。でもさすがに昨日の君たちを見て聞かずにはおれなかったよ」
 そこで言葉を切ると、サイはコーヒーをすする。
「元暗部は案外お節介なんだな」
「ナルトはボクの初めての友達だから特別だよ」
 サスケはガタンと音を立てて椅子に座った。不機嫌が顔に出ている。
「君はなぜ、ナルトにあんなことをしたんだい?いつから君はナルトをそんな風に思っていたんだ?」
「話す理由がない」
 サイの矢継ぎ早の質問に、サスケは切って捨てる。
「なら質問はやめようか。ナルトはずっと君のことが好きだった。もちろん今も」
「それくらい知ってる」
 残っていたコーヒーをサスケは飲み干した。その様子をじっと見つめながらサイが言う。
「本当に知っているのかな。それならなぜ君はあんな酷いことがナルトにできていたんだろう」
 サスケは昨日のナルトのことを思い出す。
 快楽に溺れながらも必死でサスケを求めてきた。何度も好きだといい、自分もそれに返した。まだこの指にはナルトの感触が残っている。彼の熱さも涙の味もすべて。
「ナルトも承知していたことだ」
「昨 日のことを言ってるんじゃないよ。君は良く言えばとても女性にもてていた。悪くいえば遊んでいた。それをナルトがどう感じてどう思っていたかなんて考えた こともないんだろう。だってナルトは理不尽に君を責めたり傷つけたりはしなかった。そうだろう?だから君はそんな生活を送っていた」
「何が言いたい」
 苛立ちのつのった目をサイへと向ける。
「君は知っていると言ったけれど、ナルトはもう本当にずっと君のことが好きだった。それこそ君が女性をとっかえひっかえし始めた頃から。もう何年になる?ずっ と隠してきたんだ彼は。君への想いを。でも笑って君のことを受け入れていたナルトがなぜ、君にバレてしまったんだろうね。それだけのことを君はしたんだ よ。もう、君の側にはいたくないと思うようなことをね。心当たりはあるんじゃないかな」
 サスケはそう言われて、ナルトが急に泣き出した病室でのことを思い返していた。もし自分がナルトの立場であればどうであったか。サスケは顔色を失くす。後悔が押し寄せてくるのを耐えるしかなかった。
「君は最初に、ナルトの居場所を聞いたね?それに僕は任務だと答えた。もちろん任務には間違いないけれど、彼が受けた任務は国外しかも長期だ。長くて三年、早ければ二年」
 サイがすべてを言い終わる前に、サスケの椅子がガタンと倒れた。玄関へと向かおうとするサスケにサイは回り込む。
「どけ」
「ナルトが君から離れたくなる気持ちも分かったんじゃないかい?それとナルトからの伝言」

『待つかどうかはサスケ次第だってばよ。オレはもしかしたらこの任務の間にサスケのこと吹っ切れるかもしんねぇ。でもムリかもしんねぇ。そんなオレのことあい つは待てるかな。だって悔しいじゃん。オレすげぇ嫌な思いあいつのせいでしたしさ。ずーっと追っかけてきたしさ。だからサスケもちょっとはオレの気持ちわ かればいいんだってばよ』



 サスケはサイの部屋を飛び出すと駆け出した。
 込み上げてくるものがある。
目の奥がずきずきと痛み、視界が曇りそうになった。
それを振り切って、自分は伝えなければならないことがある。
ここでお前を待つ。
それをナルトへ。
知っていれば彼は絶対自分を手放せない。
だから、サスケは足をすすめるのだ。



今なら分かる。自分はここに戻ってきて何かが欠けていた。
何もなかった。生きる目的も、ここにいる理由も。
だから何かで埋めようと必死だった。
寂しかったのかもしれない。
ここにいてもいいという、明確な理由づけが必要だった。
それにずっと追われていた。
ナルトを傷つけた時、なぜか一気にそれが膨らんだ。
だから誰でも良かった。この暗い影を薄めてくれるなら。
本当に何でも良かったと思っていたんだ。
 でもナルト、気づけばすべての発端はお前だった。
 初めてお前に自分が人に受け入れられたことを告げた時、本当にお前は喜んで、嬉しそうで、言ったことはなかったけれど戻ってきて良かったと心から思った。
 そうしてどこか欠けたところのある自分は、離れていく人間が多く、それにもお前は優しく大丈夫だと言ってくれた。
 普段なら絶対に言わない言葉。絶対に見せない表情。
 何よりもそれを求めていた。彼の特別を。
 お前がいるから自分はここにいることができていたんだ。
 気づくのが遅すぎた。しかし、気づけるわけがない。
 自分はもう誰かを深く想う心なんてあるとは思っていなかったから。
 苦しめたんだろうか。苦しめたんだろう。
 ナルトが自分でない誰かを選んだと聞いただけで、回りが見えなくなった。

 でももう、間違えたりはしない。














 ◇◆◇



「サスケ君、サスケ君!」
 任務受付所へと向かおうとしていたサスケが、馴染みの声に歩みを止める。
「ナルトがね、今日帰って来るんだって」
 少し興奮したように告げるサクラにサスケは珍しく表情を和らげた。
「ああ、知ってる」
「えー、もう知ってたの?今朝、カカシ先生に聞いた情報なのに」
 何だつまらない、とサクラがすねる。
「五日前にあいつから手紙が届いた」
「そんなに早くに?カカシ先生への報告より早いじゃない」
「任務を入れるなってことらしい」
「あー、のろけられちゃったわ」
 サクラが嫌そうに顔をしかめる。
「二年半ぶりなんだ。それくらいいいだろう」
 そんな元セル仲間の反応もどこ吹く風のサスケは、ナルトへと想いを馳せる。やはりその目は優しく穏やかだ。
「浮かれちゃって、サスケ君ってば」
「ああ、浮かれてるかもな」
 口元に笑みさえ浮かべながらサスケが言う。
 やはりその様子に複雑なものを感じながら、呆れたようにサクラは返す。
「声かけるんじゃなかったわ。そしたら帰還祝いは今日ムリね。明日の夕方いつものとこでってナルトに言っておいて。サスケ君」
「サクラ。悪いが飲み会は明後日にしてくれ」
 すかさずサスケはそう言い残すと、ついと歩き出した。
 一瞬きょとんとした彼女の顔が視界に入ったが、サスケは気にせず歩をすすめる。
すぐに、後ろでわめくサクラの声が聞こえた。
それを可笑しく思いながら、サスケは先を急ぐ。




 もうすぐ会える。
長かった。
しかし、彼が待った年月を思えばそれもかすむ。
 まだ寒い季節。
しかし、これからは―――――。














最後までお付き合い下さりありがとうございました。
そして今回おねだりしまして、ラストにこのイラストを未理さんに描いてもらいました~v
本編のラストであろうシーンです。相変わらず読者様に丸投げなラストだったんですが、これでバシっと決まりました。
構図も指示も何もなしで、とにかく思い浮かんだラストを描いてvでコレが来たんです。感動しました。もうこれ以上のラストはないと思いました。
幸せそうなサスケ。きっとナルトも負けずと幸せな顔をしているんでしょう。目に浮かぶようです。
今回もご一緒できて幸せでした。ありがとう未理さん。そしてここまで目を通して下さったあなた様に感謝です。











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