脱友☆の条件



「座れよ」
「あ?お、おぅ……」
サスケの部屋着を着たナルトが言われたとおり、フローリングに腰を落とす。それを追うようにサスケも胡座をかいた。
言われるままに先に座ってしまったことに、ナルトは心内で舌打ちする。向かい合ったサスケが思っていたよりも距離を詰めて座ったからだ。これなら逃げようとした時に腕を伸ばされれば届いてしまう。そこまで考えがおよんでナルトの眉間にくっきりと縦シワが寄った。
(逃げるってなんだよ)
サスケごときに逃げをうつだなんて、そんなダサいことできるか、この野郎。ナルトは小さな闘志を取り戻す。ついでにやられる前にやれの精神でずずいと自らサスケとの距離を詰めた。とはいえそれも気持ちとは裏腹に、若干彼の体が前へ傾いだだけだった。
普段のプライドとは違うところで体は昨夜の醜態ともいえるまずい記憶を覚えているらしい。ナルトの意思とは反対に体は逃げ腰だ。
あの手が……とか、あの口が……とか思うともうダメだった。なのでナルトの顔は傾いだ体のついでに俯きがちになる。そうすると嫌でもサスケが身にまとうにおいが気になった。
目の前にはやけにこざっぱりとシャンプーなのか、石鹸なのか、とにかくそんな良いにおいをさせたサスケが座っている。先ほど風呂から上がったばかりだからそれは仕方のないこととはいえ、男がそんな清潔感かもし出してもキモいだけだと思うのだが、何故かこのうちはサスケという男はそれに違和感がなかったりする。
自分の体液まみれであろう体が一気に気になりだした。
やはりここは自分もシャワーをあびて、一度全ての汚れという汚れを落としきってしまった方がいいかもしれない。いや、それは目前の問題から逃げてやいないか、後回しにしてやいないか、とぐるぐるナルトが実は結構どーでもいいことで結論を出せずにいる間、件の男がタイミングよく口火をきった。もちろんナルトを慮ってのものではない。
「お前は覚えてねぇんだよな?」
「しつけぇなぁ。覚えてねぇって言ってるだろ」
ナルトは顎を反らしてできるだけうざったそうにサスケの質問に返した。
「でも何があったかくらい想像はつくだろ」
「あー。まぁ、なんとなくは…な。サスケには悪ぃけどオレ覚えてねぇし。これが男と女だったら、ちょっとっつーか、かなりまじぃと思うけどさ。幸いオレとサスケだったわけだし……」
「何でオレだったら幸いなんだよ」
憮然とした顔でサスケはナルトの返答を追求してきた。得に意味があってそう言ったわけではなかったナルトは、改めて何故サスケだったら良くて、女の子だったらまずいのかしばしの間考える。
その時、目を泳がせた先にアレなものを見つけてしまって、ナルトは一気に挙動不審にならざるをえなくなった。
(サスケ振り向くんじゃねぇ)
ナルトは念仏でも唱えるように暗く心内でつぶやく。サスケが振り向く素振りをみせようものなら、問答無用で殴りかかる所存である。そう、ナルトの視線の先には彼が昨夜まで身につけていただろう下着とズボンが無造作に転がっていたのだ。
ただ単にそこにあるだけなら問題視などしないが、その2つはいかにも分かりやすく脱ぎました的な状態で鎮座していた。正直ナルト部屋では良く見かける後景だ。それがズボンだけであればの話しである。何がそこまでナルトを掻き立てるかと言うと、一緒にくるっとズボンと絡み合い丸まった下着の存在が危険だった。
ここでサスケが振り返ってしまえば、上手い具合にパンツの内側とご対面という非常にナルトとしては顔から火が出るほど恥ずかしい事態になってしまう。そんなことよりももっと凄いことをサスケとは致してしまっているのは分かっているが、これはこれで我慢ならないことだったりした。
あれだ、丸見えよりチラリと見えた方が萌えるというチラリズム的でフェチ的な羞恥である。あれをあんな形態にしたのは目の前の男だと覚えてはいるが、この時ばかりは過程よりも結果なのだ。
そしてついでとばかりに絶対シミってる。間違いなくシミってるはず。というかシミってないわけがない、あんなに下半身がうずいていたのだ。自分からは見えないが、サスケならそれが見えてしまうに決っている。あいつの目ははんぱない。いや、今はそうじゃなくて、あー、なんだサスケだったら良くてって話しだったか……?とにかく後ろを見るんじゃねぇ……。
「だって子供とかできちゃったりしたらヤバいってばよ……」
違うことに気を取られながら一般的な見解をナルトが声を押し殺した様子で述べる。
「責任も取れねぇような覚悟で手ぇだしてんじゃねぇよ」
それにくそ真面目な解答でもってサスケが言い重ねた。
「えーだって酒が入ってるんだったら仕方ねぇってばよ」
なかなかにろくでなしなことを言ったナルトだが、今の挙動不審な状態も手伝って、動く頭などたかがしれている。それに仮想内での緊急事態であるならそんな感想しかでてこない。だからこそ、そこを強調するサスケにんーー?と引っ掛かる部分もあるといえばある。がナルトとしては穏便にすませたいというのが本音だ。寄り道はせずに真っ直ぐスマートに終わらせたい。
そう、何かあったかもしんねぇけど、それはもう酒で流してしまおうぜー。これからも今まで通りヨロシクってばよ!
ナルトが望んでいるのはそういうことなのだ。
今のサスケとの距離は理想である。任務では互いに協力しあい、強さを求めては拮抗する。そしてたまに一緒に修業をして、気が向けば酒を酌み交わすのだ。その合間に見ることのできるサスケの笑った顔など見ると、ナルトの胸は切なくなり、この瞬間幸せだと実感できた。それが満面のとか太陽のようなとかそんな形容とは遠く離れた、苦笑だったとしても。
だからナルトはこの関係がずっと続けばいいと思う。それがずっとなんて無理なことは分かっているけれど。今日そんなことを目の当たりにしてしまったし。だからこそ深酒なるものをしてしまって、多分サスケもそれに気付いたからこそ正体なくすまで付き合ってくれたんだと思う。分かりにくいが優しい男だ。
しかし、今回ばかりはサスケの言葉に頷くわけにはいかなかった。いや、普段からサスケの前で素直に頷いたことなどない自分ではあるが。
そんなナルトの気など知らないサスケは心を決めたように、先ほどからやけに真剣な気難しい表情で言葉を口にする。
「酒が入ってるとか関係ねぇよ」
サスケの言いように、ナルトは眉をひそめた。
それが彼の本心であるのなら、行き着く先は非常に危ぶまれるんでなかろーか。
サスケからしたら泥酔してようが、記憶とばそうが、意中の相手にしか手を出さないと言っているようなものだ。思い出してもそう言い切ったところからサスケの本気がほんのちょっぴり垣間見えてしまった。瞬間、ナルトの全身の毛という毛が逆立った。
「オレってばそーいやシャワー浴びてなかったから、におうよな?ちょっと風呂貸してくれってばよ、サスケ」
棒読みのような調子の途中でナルトは腰を上げた。それはかなり不自然な話題転換であり、わざとらしい作り笑いであったがナルトはそんなこと気にしない。一刻も早くここを出ないといけないと今までの経験が教えてくれている。
ナルトの見間違いでなければ、彼は臨場態勢ともいうべき状態に突入していた。
彼の目は赤かったのだ。ナルトの背に嫌な汗が流れ落ちる。
ああ、神様なんでこの男は親友の前で、こんな朗らかな朝っぱらから、しかも己の自宅で殺気立っているんでしょーか。やる気なんですか。そーですか……。
最後まで敵を捕らえて残っていた顔を目的の方向へと向けた時、音がしそうな程素早く力強くナルトの手首ががしっと捕まれた。片膝ついた中腰状態のナルトの体がびくりとはねる。
もうナルトの心臓は面白いくらいにどきんどきんと強く打ち出した。
マズイまずいこれはちょっと危険かもしれない、とナルトは表情には出さずに慌て出す。
先ほど殺気と言ったがそれは近からず遠からずといった感じで、さすがに昨晩の笑えない出来事に悲観したサスケがナルトを抹殺しようとしているだなんて思わない。
だとしたら彼特有の目は何をしようとしているのか。火がでるわけでも雷がでるわけでもなければ、残るはひとつしかないだろう。ちょっと待て。
「においなんて気にしねぇ。お前が思い出さねぇってんなら思い出させてやるよ」
言うが早いか赤い目を閃かせたサスケが唇を吊り上げる。
その瞬間ぐんと彼の赤い目が迫ってきて、分かりやすい幻術の始まりをナルトは察した。そして、
「オレは気になるんだってばよーー!!」
朗らかな朝日差し込む部屋の中、ナルトの悲鳴のような懇願のような雄叫びが響いたのだった。



ぬるんだシーツを握りしめて、ナルトは今自分の身に何が起こっているのか分からないでいた。無意識の嫌悪はもうとうに過ぎ去っている。顔をシーツにこすりつけながらひたすら堪えた。
サスケはずっと何かを探しているようで、今は少し乾いて引き攣りはじめたそこを丁寧に嘗めているところだった。
時折吐かれる熱い吐息がナルトの双尻を滑る。しかしそんな刺激よりも強い焦れったさを与えられているナルトは、腰を震えさせることしか出来なかった。
「うっ……うっ……んん」
内股がピンと引き攣る。先ほどから解されていたナルトの穴の中に、サスケの舌が入ってきたのだ。
「う……あ…あぁ…ッ」
ナルトの体が強張る。しかしそれも一瞬のことで、内側を舐められることに慣れてきたそこは、一度すぼまってすぐにサスケの舌をやんわりと押し出すような仕種をみせた。
ナルトの穴が収縮を繰り返し始めたのを悟って、サスケが声なく笑う。
「ふう……うぅ、サスケェ……」
「感じてんのかよ、ナルト」
最後に音がするほどナルトのそこに口づけて、サスケは口元をぬぐいながらそう言った。
「まだ、やんのかよぉ…。も……いーだろ。そこばっか弄られっと、へ、変な……かんじ…するってばぁ…」
枕に額を押し付け変だ、変だと譫言のようにナルトが繰り返す。顔を隠すように上げられた腕が、彼の動揺をあらわすように動き回っていた。
自ら足を開き腰を高く上げそうになる自分を懸命に抑えつける。もうナルトは気持ちいいんだか、切ないんだかわけが分からず、ただこんなことをされても先ほどからナルトの尻の穴をほぐしにほぐしているサスケを蹴り上げて逃げようとは思わなかった。
「あ…あっ……や……ううぅ…」
またゆっくりサスケの指が入ってくる。固く長いサスケの指は舌とちがってもどかしさと、くすぐったさを払拭し、ダイレクトにそこに突っ込まれている感覚が強くて、ナルトは嬌声とも言える声を出してしまう。
また前が濡れて漏れるような感じがした。ぽたぼたと落ちる滴でシーツが濡れる。もうどれだけはなったか分からない、自分も、サスケも。それなのに快感のしるしがとめどなくにじむのが不思議だった。
おかしくなった頭で人間の体の70パーセントが水分でできているのなら、これも仕方ないのかとか妙に納得している自分がいて、あーもう、どうにでもなれとナルトは今の状況を受け入れる。
背中から覆いかぶさってくるサスケが熱くて、べったり密着しててナルトの息がさらに荒くなった。ひどく興奮した。
「なぁ、ナルト…。お前まだ気持ち変わらねぇのかよ」
耳元でサスケが熱くささやいた。かかる息はナルト同様少し荒い。
「な、なんの……ッ」
「入れてぇ……ここ」
「バッ、バッカじゃねーの!?ムムムリだ!ムリムリッ」
勢い良くはねのけられてムッとしたサスケは、やや強引に指を根元まで埋め込んだ。粘膜を強く擦られる刺激にナルトの口から小さな悲鳴があがる。とっさに握りしめたシーツをたぐりよせた。
しかしその悲鳴が痛みだけではないことを感じとって、サスケはそのまま旋回させるようにぐりぐりと指を動かす。ナルトの先端から透明な液体がばたたと音をたててシーツに新たなシミを作った。
「なんで…だよ。ここ…全然嫌がってねぇのに」
「あっ…あっ……!」
強弱をつけるようにぐっぐっと指を押し込まれ、ナルトはたまらずガクガクと体を震わせた。もうここまでされてしまっているのなら、いっそ最後までやってしまってもいいんじゃないかと思う。
子犬のように体を震わせながら鼻を鳴らすナルトを押さえ込み、サスケは目前にある汗に光る首筋に噛み付いた。
「い…ッ!サ…スケェ!てめ……!あ……ッ」
歯型のついたそこを舐められて、ナルトは首をすくめる。
「なにがムリなのか…言えよナルト」
苛立ちをかくしもせずに、サスケがナルトを追い詰める。手が胸元に回ってきてナルトの小さな突起をいじりはじめる。それがダイレクトに下半身にきて、ナルトは抗議のような嬌声をあげつづけた。
「だ、だから!ヤなんだってば!あ…ッ、あ……!クソッ…。もー…!くぅ……ん!はぁ…はっ……。す、好きじゃねぇかもしんねぇのに!さっき…!酒で分かっ…ねぇって……サスケ言っただろ!」
「好きだ!」
すかさずサスケが言う。ナルトの中で一瞬すべてが止まった。
「バッ、バカじゃねーの!今言われて誰が信じるかっ、あッ……!」
一気に指を引き抜かれてナルトは甲高い声をあげた。
「今分かった。今気付いた!」
「てめーは突っ込みてぇだけだ!」
ぐいと体を反転させられてサスケを見上げる体勢になる。すぐにナルトの背に両腕が回り抱きしめられる。というより押さえ込まれた。
「ぐ……ッ」
全力で締め上げられているような感覚に、手加減しやがれとナルトが叫ぶ。しかし離せとは言わなかった。
「どーやったらお前は信じるんだよ」
自身の猛ったものをナルトのそこに擦り付けてサスケは聞いてくる。いやらしいその仕種に答えるように、立てたナルトの足はサスケの体を挟み込むように力が込められた。自らも擦り付けるようになってしまって、走る快感に腰がぶるりと震える。
「はぁ…はぁ。だから明日!寝て起きたら!」
「……」
サスケの動きが止まった。何かを考えているのかじっと動かない。
「サスケ…?」
じれたナルトがサスケをうながす。あともうちょっとでイケるのに、サスケはずっとナルトの前には触ってくれず、後ろばかり攻めてきていた。だからもう随分イケずに喘がされている。先ほどサスケが腰を擦り付けてナルトに与えていた快感で拍車がかかっていた分、今がつらい。
「分かった。そしたらもう寝るぞ」
「は?」
「寝て起きて、まだオレがお前が好きで、抱きたいって思ってたらいいんだろ?」









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