長期任務明けの休暇中火影室に顔を出した暗殺戦術特殊部隊副隊長は、先日自分が目にした時より様変わりした火影にいぶかしげに声をかけた。
「何だそれ?」
「いきなり随分なあいさつだな、うちは副隊長」
「今は休暇中だ」
現六代目火影に対して存外な口をたたき、難じる彼の言葉に問題外とばかりに切って捨てるのは、長の時間を共にし深い部分で互いに結び付いていると今は信じて疑うこともないうちはサスケ。
その彼が怪訝にも現火影に詰め寄るには十分な理由があった。
「髪、切っちまったのかよ」
そう、先日長期任務から帰還した自分が彼と久しぶりの逢瀬を堪能した際は、彼の見事な金の髪は無駄なく引き締まった腰で揺れていて、肩にかかる奔放にも跳ねる豊かなそれはまるで一つの炎をまとったかのように美しかったのだ。
そうサスケが賛辞る度に彼は眉を寄せて、ぶすっくれた。彼の恩師を真似しての事と知ってはいたが、腕の中で絡み付くその髪はやはり猛々しいというよりもサスケの心をあやしく誘う蜜のようなものだったのだ。
「だって邪魔だったんだってばよ」
決まり悪気にナルトはそう言った。
「何だよサスケ。気にくわねぇってのか」
「いや。どうゆう心境の変化なのかと思ってな」
ついと音もなく近づいた男は遠慮もなくナルトをじっと見つめる。
「まぁ、惜しいと思わないでもないが・・・。悪くない」
サスケはにやりと男くさく口元を吊り上げると、今は無防備なナルトのうなじへと唇を寄せた。
「ここをどこだと思ってやがる」
「・・・これ以上をされたくなかったら、手を離せナルト」
「い、や、だ」
ぐいっと掴んだサスケのひとつに束ねられた髪を、離すものかとナルトはその手に力を込めた。その容赦のない様子にサスケは小さく嘆息する。
「オレも切るかな」
そうつぶやくと戯れに伸ばしていた手をサスケは戻した。初めからここでどうこうしようという考えは端から持ってはいない。しいて言うなればついぞお目にかかれなかった彼のすっきりと伸びた首筋をみとめて、全く何も思わなかったと言えば嘘になるのだが。
「随分ばっさり切ったものだな」
「直毛のサスケには分からねぇ問題だってばよ」
「?」
ナルトの言葉に彼がひそかにその髪の長さを持て余していた事を知り、それが何かと思案する。髪を切るなら何故自分がいなかった3ヶ月の間でなく自分と会ったすぐ後であったのか・・・。そこまで考えを巡らせ、
(なるほど・・・)
と、サスケは心の中で苦笑した。
そして自分をいつものようにやんわり拒んだ恋人に報復という言葉を放り投げる。
「そんなにあの夜オレは激しかったか?」
その長くも豊なうねる髪は背を擦られるたびに、どれほどもつれ絡まったことだろうと、思ってサスケはナルトを見つめる瞳を緩やかに細めた。
「さっ・・・!」
今では珍しくなった羞恥に頬を染めた彼の様子にサスケは内心ほくそえむ。
「・・・もう、サスケなんか知らねぇ」
気分を害した風に唇を尖らせるような幼い仕種にまで愛しさを感じ、サスケは懐かしさも覚えるナルトの今は短くなってしまった金の髪に、拒まれると分かっていながらも口付けたのだった
Fin.
自分の中の萌えを入れてみました。(オヤジ設定だとか、ちょっとサスケの言葉がお上品?だとか、長髪設定だとか・・・。
駄文短編「幸福者の島」より少し前のお話でした。ああ、ガイズラブ~♪
次へ→