原作設定は忘れてくだ……







とはどんなものかしら?15






今日の火影就任会議に次期火影候補としてオレは出席していた。
会議には現火影のばあちゃんと
上忍班長のシカマルの父ちゃん、
火影護衛部隊隊員のネジに
副班長代理としてシカマルが里から出席していた。
火の国からは6名の大名様に使える家臣たちが
オレたちと向い合わせになるように席についている。
そしてどこかぼんやりした顔付きの大名様が上座に座っていた。

大名様の右手に座る進行役の男が
形だけの挨拶と日頃の労いの言葉を発して
会議の始まりとなった。

「それにしても、もう次の火影を任命するとは
体の調子でも悪いのかえ、綱手?」
「いえ、体調に問題はありません。
ただこう見えて私も歳を取りましたので
自分の意思で次期火影を指名するくらいはしておきたいと思っただけのこと」

以前勝手にダンゾウを火影に任命したことをばあちゃんは皮肉った。

「有難いことに代々受け継がれて来た火影という誉れを
譲りたいと思う人物も現れてくれたこの機会に
大名様には紹介しておきたいと思いまして」

そう言ったばあちゃんの言葉に大名様は
ふむ、と一度頷くとオレに顔を向けた。

「その人物がそこのうずまきナルトなのかえ?」
「そうでございます」

大名のおっちゃんが眠たそうな目を何とか見開いて
身を乗り出すように見てきた。

「うーむ。若過ぎぬか?」
「ナルトはこう見えて二十歳を過ぎております」

ばあちゃんはさらりとそう言うと
にこりと笑って見せた。
オレこの前二十歳になったばかりだけどな。

「ほーほーそうは見えんがのう」
「砂の国の風影と同じ歳です。
彼はもう四年も前に就任している。
私としては今回の就任も遅いと思うくらいです」
「そう言われるとそうかもしれんのう」
「しかし現風影は四代目風影の子息ですぞ。
同じように考えるのはどうかと」

真ん中あたりに座っていた眼鏡のおっちゃんが口を挟んでくるのを
ばあちゃんは睨みつけるように顔をそいつに向けた。

「影を決めることに血筋や家柄は関係ない。
影とは里を愛し正しい道へと導いて行ける忍がなるものだと
私はそう認識しておりますが」
「うむ、綱手の言う通りじゃ。
里が繁栄し頑強であるからこそ火の国も安泰でおれるのじゃ」
「しかし大名様、我が大国の安全をこのような若者に託すというのはいささか不安が拭いきれません」
「そこは綱手が指名するだけあって強いのであろう?」

大名様はゆるい表情の中にも確信の言葉でばあちゃんに質問した。

「初代様にも引けをとりません。
ナルトははたけカカシ、さらに自来也の弟子でもありますので」
「おおぉ!それは何とも心強い!!余は自来也のことが好きだったのだ。
そうかあの自来也の弟子でもあったか」
「自来也とカカシの弟子とは…」
「いやしかし…」
「初代火影に匹敵するなどそんなデタラメを…」
「どこの馬の骨だか知らん小僧が火影などと私は反対だぞ」
「だがあの有名な二人の弟子であるというのなら実力も相当なものでは?」
「だがその忍は人柱力という話しではないか?」
「何、人柱力だと?」
「それはなんと危険な…!」
「そのような者にこの火の国の中枢を任せるなど、おちおち夜も眠れんぞ」
「……馬の骨?… …危険?」

誰かが感情的に呟いた蔑みの言葉に
静かに
でもはっきりと怒りを含んだばあちゃんの声が聞こえて
オレは目の前で騒がしく口々に好きなことを言っている大名様の家臣たちを見て
小さくため息をついた。

ここにくる前にばあちゃんから彼らの話は聞いていた。

その昔、大名と大名に続く家臣たちとは国を取り仕切り秩序を作り
国が国として機能する礎を作った人達なんだと
知恵を出し合いあらゆる摂理情理を理解し解き明かし
人々がより良く過ごせるために最初に尽力した人たちだと。
そこに彼らの思想に賛同した特殊な力を持ち、身体能力に長けた一族が
それならばと利害の一致によって手足のように働いた。
国を守り繁栄させるため取り仕切る大名の手足となるのが忍。
忠義を誓うのが侍。
ここまではアカデミーで最初の段階で学ぶことだ。

今、彼らにとって忍とは
忠義を誓い手足となって便利に動く者だと認識されている。
侍という人たちが減っていっているのも彼らに命を賭して忠義を誓えるような者が
いなくなってきているからだとばあちゃんは言った。
オレたち忍は里の有益となる国に雇われているという感覚に近い。
それでも彼らは自分たちの価値も知らずに無償の忠義を押し付けてくるのだと。

「さっき私は火影になるのに血筋や家柄は関係ないとは言ったが
あなたがたの言う血筋でいうならナルトは誰よりも相応しい。
木ノ葉の黄色い閃光四代目火影の忘れ形見なのだから」
「四代目の?」
「それは確かに火影として申し分ないのでは…」
「わしは最初から只者ではないと思っておった」
「よくよく見てみれば四代目に似ておる」
「しかし人柱力であることには変わりないぞ」
「いや、しかし……」

オレたちの存在を忘れたように家臣たちが言い合いを始めた。

「ばあちゃん」

オレは隣に座るばあちゃんにこっそり声をかける。

「もう秘密にする必要もないだろう。
九羅嘛が悪用されるとでも言うつもりかい?」
「んなわけねぇだろ」

挑発するみたいに言うばあちゃんにオレは自信満々の笑みを見せる。

「さて、大名様並びに家臣様方」

ばあちゃんは席を立つと首をぐるりとめぐらせた。

「ナルトは先の大戦で誰よりも軍功をあげた忍。
実力も備えなおかつあなた方が尊ぶ血筋とやらにも問題ない。
次期火影として認めてもらえますね?」

こそこそと家臣たちが顔を見合わせるようにした後大きく頷き合った。

「大名様。私たちに異議はありません。
うずまきナルトを次期火影として就任を許可します」
「そうか。ならば余にも異論はないぞ。では……」
「ちょっと待ってくれってばよ」

ばあちゃんと並ぶようにしてオレも立ち上がる。
全ての人たちの視線が集まるのを感じながらオレは話を切り出した。

「話の途中で割り込んじまって悪かった。
でもオレの意見も聞いて欲しいって思ったんだってばよ」

そう言った後、
右隣ではばあちゃんとネジのため息が
左隣からは馬鹿だの考えなしだのと聞こえて来る。
きょとんとした様子でこっちを見る大名様に歯を見せて笑ってやった。

「聞いた上でオレを火影として認めて欲しいって思ってる」
「いいだろう。ナルトとやら余に何を聞いて欲しいというのかえ?」
「ありがとうってばよ。
これは大名様だけじゃなくてここにいる皆にも聞いて欲しいんだ」

振り返って皆の顔を見た時、
オレが何を言いたいのか感付いたらしいシカマルが苦虫を噛み潰したような顔をした。
それににっと笑って答えてオレはまた前を向いた。

「さっき話にも出てたけどオレはカカシ先生とエロ仙人に色んなこと教えてもらった」
「エロ仙人とは自来也のことかえ?」

大名のおっちゃんはにやにやしながらそう聞いてきた。
オレはそれに頷いて

「エロ仙人の本ってそんなに有名だったりすんのか?」
「イチャイチャシリーズは何度読み返しても胸が高鳴る素晴らしい本じゃ」

いかにも好きですって顔した大名のおっちゃんが
興奮した様子で何度も頷きながらそう言った。

「へぇ、でもオレはエロ仙人の本だったら
やっぱりド根性忍伝が一番好きだってばよ」
「おお、あの一番売れんかった本か」
「本当みんなエロが好きなんだなぁ」

オレは色んな国を旅しながら執筆していたエロ仙人を思い浮かべて笑みがこぼれた。

「オレってばエロいことはあんま教わんなかったんだけど
大切なことはいっぱい教わった。
色んな話しして納得できたこともあれば
納得できなかったこともあったし
疑問に思ったこととか解決したこともあれば
しなかったこともあった」

オレはあの日、エロ仙人と話していたことを思い出す。
修業の旅とは思えないいつもおちゃらけて馬鹿なことばっかしてたエロ仙人が
その日は見慣れない真剣な顔してオレと話してた。
今思えば本当に大切な話しだったんだ。

「エロ仙人が最後にオレに託した問題。
答えは教えてもらえなかった。
エロ仙人もその答えを持ってなかったんだ。
オレもそん時答えらんなかった。
でもこの前の大戦で分かったことがあったんだってばよ」

戦いの中
残された思い
託された意思
思い知らされた痛みと悲しみ
やり場のない怒りと憎しみ
誰もが苦しみながら前へと進んでいた。

「結局はみんな平和を望んでるのに
方法が違うってだけで
手を取り合うことができなかった。
目的のために犠牲を払って
騙しあって殺しあってた。
最後には憎しみしか残らなくて
復讐は復讐をよんで
血を血で流す争いになる。
このどうしようもない憎しみの連鎖をオレは
断ち切りたいって強く思った」

忍の世界にはびこる憎しみをなくす

「みんなが笑って暮らせる世界を作る。
そのためにはみんなが本当の意味で
信頼し合えるようになんねぇと駄目なんだってばよ。
そんな日がいつか来る。
エロ仙人はそう信じてた。
師匠の信じる未来を
オレも信じてるんだってばよ」

戦争のない平和な世界を
みんなが望んでるはずなんだ。
手を取り合って
作り上げる。

そのためにはどうすればいい?
ただ望むだけじゃ駄目なんだ。
動かなければならない。
前へ進む力はある。

道を定めろ。

「国同士が信頼し合うのに
相手の脅威になるようなもんはいらねぇ。
だからオレは
暗部、暗部養成部門根の解散を実行する」

会議室が一瞬しんと静まりかえった。
そしてすぐにざわざわと辺りが騒がしくなる。

「暗部に変わって警務部隊・治安部隊の強化。
それにともなっての掟改正も必要になる。
他国との同盟条約の見直しは絶対しなきゃなんねぇ」
「な、何を言ってるんだ!暗部解散などしてどうするつもりだ!」
「暗部は火影直轄の最強部隊だぞ。
それを解散させるということがどうゆうことか分かって言ってるのか!?」
「それだけのことをしようとすれば
どれだけの人員と予算が必要か!?」
「武力低下もいいところだ!
そんなことをしてみろすぐに他国に攻め込まれて
火の国は侵略されるに決まっておる!」
「今まではそうだったかもしんねぇ!
大戦が起こった後だ、みんなが平和を望んでる!
武力行使での国と国との牽制なんてすぐに崩れちまうんだってばよ!」
「まさか次期火影候補ともあろう者が他国と結託してるのではなかろうな!?」
「どこの国に何を言われた!?」
「他国の手引きをするような奴を火影になどできるか!
さっきの発言は取り消しだ!
ワシは断固としてこの者を火影になど認めんぞ!」
「私も撤回する!」

激昂した家臣たちが口々に罵倒を飛ばし始めた。

それを真正面から受ける。
こうなることは分かってたから驚くことはなかった。
オレが諦めなければいいだけの話。
未来がかかってるんだ。
オレに希望を託してくれた人たちの最期の願いを
潰させるなんてオレがさせない。
幸せを願ってやまないアイツのためにも
どんなに時間がかかっても諦めることはしない!

「オレは他国と結託とか手引きとかそんなことはしてねぇ!
でもオレの意思を認めてくれた国はあったってばよ」

あの大戦から四年の間
自分なりにエロ仙人の答えを探した。

最初曖昧だった答えは
あの日、
”サスケ”が拘束されてばあちゃんとぶつかった日から
カタチをはっきりさせていって

サスケの目を封印してからは
何かに駆り立てられるようにして走り続けた。

そうして得た同志たち
国は違っても信頼できる仲間たち

「それが裏切りだと言うのだ!」
「木ノ葉の暗部を解散させ弱体化を計った後
里だけでなくこの国までも狙ってくるに違いない!」

激昂した家臣たちが唾を飛ばす勢いで怒鳴り散らした。

「違う!そんな卑怯なことはしねぇ!
まずは大国って言われてる国から先に進まねぇと誰もついてこねぇんだ!
砂と雷の二国からの良い返事はもうもらってる!
後は水と土の二国からの承諾があれば
五大国全ての国で暗部制度の廃止を進めていけるんだ!
あんたらの言うとおり暗部の軍事力は大きい!
だからこそ他国のしかも大国の暗部部隊は
小国からしたら大きな脅威でしかない!
他国を信頼し手を取り合っていくのに
そんな武力組織が裏にあるって分かってて
相手を信用できるかってばよ!?
だからまずは火、水、風、土、雷の
五大国と言われてる大国から始めなきゃなんねぇ!
これは絶対に必要なことだ!
そうなって始めて周りの諸外国も
理解してくれるとオレは思ってる!!」
「そんな話し我々が信じるとでも思っているのか!?」
「そうだ!貴公の話しには根拠が全くない!
信用やら信頼は国内だけで十分!
わざわざ他国のましてや小国の面倒までみていられるものか!!」
「その小国の犠牲で火の国のような大国は
豊かで平和な暮らしが出来てるって
あんたらは知ってるのかってばよ!?
大国同士の戦争に巻き込まれた小国の現状を
あんたらは知ってるのかよ……!」
「そ、そんなことを知る必要などどこにある!
我々は火の国の人間だ!!
自国の領土と民衆を守り、それらを豊かにしていくことこそ我らの役割。
間違ってなどおらん!!」

開き直ったように老家臣がそう言い切った。
その時

「大名様御一同!」

様子を伺っていたばあちゃんが鋭い声を発した。

「先程から聞いていればあなた方の発言は
己の保身しか考えてないようなものばかりだ」
「何を言うか!我々は民衆の代弁を!」
「そうだ!それを何と無礼な!」
「無礼は承知の上
あなた方は里が自分たちの為にあるものと誤解をしているようだが
私たち忍はあなた方と有益な取引をさせてもらっているからこそ
あなた方を守り手足となって動いているだけに過ぎない。
決して侍のように命を捧げ忠義を誓っているわけじゃないことを忘れないで頂きたい。
ただそれでもあなた方の過去の貢献には敬意を評しているからこそ
今そうやってそこに座り意見を言うことができるだけだ。
過ぎた強要や支配的采配に私たち忍は一切従うつもりはないのだと
そろそろ認識を改めて頂きたい。
それでも我らの意思を抑制し支配下におきたいというのなら
どの国の里よりも脅威となる最も近い里を
敵にまわすことになるとあなた方は覚悟を持たれることだ」
「な、なんと言う侮辱!!
国を守るはずの里が我々を蔑ろにし
あまつさえ脅しをかけるなど許されることではないぞ!!」
「その認識が間違っていると言ってるんだ!
軍事組織が政治介入をしてはならないように
逆もまた然り!!
あなた方は今まで里への干渉が強過ぎた。
里や国の繁栄のためとなれば
あなた方には敬意を持って従おう。
だが単にあなた方の有益にしか繋がらないような従属化を
私たちは受け入れるつもりはない」

自分たちに今どれ程の価値があるかご存知か?

ばあちゃんのキツイ言葉に
家臣らが口々にばあちゃんを罵り罵倒した。

「ばあちゃん言い過ぎだってばよ」
「ふん、いつものことだ。
それに元はと言えばお前が後から余計なことを言うからだ。
暗部解散など今ここで言わなくてもいいことだろうに。
就任が格段に難しくなったじゃないかい」

それに今日で随分奴らには嫌われた。

と、ばあちゃんは言葉ほど残念がってる風もなく言った。
オレが就任出来なくてばあちゃんが火影のままでも
彼らには面白くないと思わせた方が良かったんだろう。

「相変わらず綱手は容赦がないのう」

静粛に、静粛にと憤る家臣たちを落ち着かせようと
進行係りが声を張り上げている中、
大名のおっちゃんが呆れたように苦笑した。

「皆の者、発言を控えんか」

今まで高みの見物とばかり
黙っていた大名様がのっそりと立ち上がった。

「今日は次期火影を決めるために集まってもらったんじゃ。
国と里との関係は大切なことではあるが
悪化させるような発言は控えるようにしてくれんと」

まだ不満そうな声が次々とあがる。
それでも立ち上がってまくし立てていた家臣たちは
オレたちを睨みつけるとガタガタと音を立てて椅子に座った。

「うずまきナルト。
さっきの暗部解散、それに伴っての掟改正、他国との条約案の見直し、
後はなんだったかえ」
「今はそれで十分だってばよ」
「本当にこれらをやってのけようと言うのかえ?」
「ああ」

オレは真っ直ぐ大名様の目を見据えて頷いた。

「風影と雷影からは書状と約定書をもらって来てる」

持って来ていた巻物と封書を前においた。
またざわりと会議室が騒ついた。

「持って来てくれんかえ」

そう言われてオレは前においたそれらを持って大名様に近付いた。
すぐ近寄って来た進行役が受け取ってまずは二通の書状を大名様に渡した。
ざっと読んだで次に巻物になっている約定書を開く。

今度はじっくり目を通した後
顔を上げた。

「うむ。お主の本気は分かった。
両国とも決められた同日、同時刻に暗部解散の公告を約しておる。
次期火影をうずまきナルトであることと
五大国全ての国が揃うことを前提としてじゃがの」
「うずまきナルトの火影就任は別として五大国がそんな案件に従うのか」
「国を捨てるようなもんだ」
「にわかには信じられん」
「今は信じてくれなくてもいい。
でもオレは必ずやり遂げる。
五年後には、いや三年後には周辺国にも同意してもらって
世界を変えてみせる。
これはその第一歩なんだ」

この前の砂の国での任務。
ずっと進めていた暗部解散の了承を我愛羅から受け取った。

『遅くなってすまなかった、ナルト』
『何言ってんだってばよ。
オレってばすっげぇ我愛羅には感謝してる』
『雷の国からはもう随分前に了承が取れていたと聞く。
それなのに……』
『きっと雷影のおっちゃんとこは特別なんだってばよ』
『そうかもしれないが』
『皆を説得すんの大変だったろ?
本当、ありがとうってばよ。
賛同してくれる皆のためにも
オレは絶対ぇ諦めねぇ』
『ああ、お前には期待している。
それに感謝をするのはこちらの方だ。
オレは今までずっとお前に助けられて来た。
そのお前が言うんだ。
手を貸さないわけがない。
それにオレはお前の言葉を
オレよりも信じてる』
『我愛羅……』
『きっと誰もがお前に惹かれ
お前に賛同し
お前のために戦うだろう。
オレもそのうちの一人だ。
オレはお前の中に希望を感じずにはいられない。
皆を先導し光の道を進むお前の姿が
もうずっと前からオレには見えていた。
お前の苦しみはオレの苦しみであり
お前の喜びはオレの喜びでもある。
オレは今持つ全ての力をお前に捧げる』



友よ

今こそ



お前に応えよう






「オレには背負うものがある。
大事なもんがある。
あんたたちにもあるはずだ。
生まれ育った故郷
愛する人たち
今まで守り抜いて来てもらったこの国を
オレも守りたい!
国を捨てる?
攻め込まれる?
そんなことオレはしねぇしさせねぇ!
何に変えても!
オレの何を犠牲にしても守るって決めたんだ!!
代々の火影に恥じるようなことは絶対しねぇ!
だから大名のおっちゃん、
次の火影をオレ以外に選んだりしないでくれ。
今は火影と認めてくれなくてもいい。
オレは必ず残り水、土の国からの了承をもらってくる。
それまで待ってて欲しいんだ。
その時オレは堂々と胸張ってまたここにくる!
オレは絶対に火影になんねぇといけねぇんだ!!
この書状を持たせてくれた風影と雷影に応えるためにも!!」

食いしばった歯がギリと鳴る。
届けばいい。
いや、届かせないと意味がない。

この国を、木ノ葉の里を守る。
それがお前を守ることにも繋がっていくんだ。



「これはどうやら火の国と里だけの問題じゃなさそうじゃの。
皆の者、これは忍の世界、余たちの未来のかかった大事な審議。
感情に流されず冷静になってもう一度話し合おうではないか」

会議室の中に大名様のおっとりとした声が響いた。






その後、ほどなくして火影就任の審議が決定した。
現行綱手のばあちゃんが火影のままで
オレは次期火影ということで会議は終了した。
ただし、オレが五大国全ての約定書をもらえたらという条件付きで。
期限は切られなかったけど、待ってもらえて三年だろうと思う。
もちろんオレはそんなに時間をかけるつもりはなかった。

大名殿からの帰り道、
ネジとシカマルからは焦り過ぎだと指摘された。
慎重に進めるべきだと。
オレの原動力がどこから来るのか知っているからこその
ネジの言葉だった。
だからそれを諌めるためだったのか
それともちょうど潮時だったのか
どっちなのかは分からなかったけれど

「あの話が正式に決まりそうだ」

ネジはそう言うと
だから焦るなともう一度念押しした。



忍としての復帰が近付く。



それはオレにとって嬉しいことのはずだった。










暗部大好きです…!


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