†††春を待つ†††



つぶった瞼を通しても日の光を感じて、ナルトは羞恥に頬を染めた。なぜこんな日の当たる場所で、人には言えないような行為になだれ込んでしまったのか。
「……あ……サスケ……ッ!」
立てられた膝の間にサスケが屈み込んできて、ナルトは咄嗟に彼の髪をつかむ。髪に混じってサスケの目を覆う包帯の感触に、つかんだ手指の力が抜けるようだ。己の下腹部から卑猥な水音がしてさらにナルトの羞恥を煽る。目も眩むような慣れない快感に漏れそうになる声を必死で抑えていたナルトだったが、痛いほどに張り詰めたそれを喉奥までくわえられて、既に己の意志では抑え切れないと両手で口を塞いだ。それでも鼻にかかったような吐息は漏れてしまうようで、計らずしもナルトはサスケを喜ばせる。
「も……ムリだってばっ……サスケ…………!」
己の限界が近いことを知らせ、離せと黒い髪をつかむ震える指に力を入れた。話す舌の根が酷く痛んだ。荒々しく口付けられた結果の甘い痛みでさえ、ナルトをたまらなくさせる。
そんなゆるいナルトの苦言など聞こえないとでも言うように、サスケはナルトの敏感な先端に軽く歯を立てた。その瞬間押さえ付けていたナルトの体が一度大きく波打ち、頭上から艶やかな声で名を呼ばれる。サスケはズクンとひときわ大きく熱がたぎるのを感じた。
「イケよ、ナルト……」
そう言ってサスケは先端の割れ目を舌でこじ開ける。それに応えるようにナルトの体がビクビクと痙攣した。
「……は、なせって……!」
ずり上がろうとするナルトの体を抱え込むように腕を回して抑えつける。サスケはナルトを追い上げるために一度舐め上げると、深くそれを咥えこんで強く吸い上げた。
「……あ……あああっ!」
びくんびくんと体が震えてナルトはサスケの口の中に精を放った。体を丸めて過ぎた快感をやり過ごす。
「……んっ…………」
(サ、サスケの口ん中に出しちまった……)
ぺろりと唇を舐めるサスケを見て、ナルトは顔を赤らめながら声を上げた。
「お、おまえっ飲んだッ?」
「ああ、苦いと思ってたが、そーでもないな……。初めてか?」
そんなナルトの様子にサスケは唇の端を吊り上げ、やけに男くさく笑った。そしてすぐにナルトに口付けて来るあたり自分の答えなど聞く気はないのだろう、早過ぎる極みの訪れがそれを肯定しているようなものだ。
「……っ」
達したばかりの敏感な体は、優しい口付けさえも胸を騒がせるようで、ナルトは小さく喘ぐ。ゆっくりと体を倒され背中にコンクリートの冷たさを感じたが、それも今のナルトのほてった体を冷めさせるには全然足りなくて、うっすら開けた目に映る空の青さとサスケの感じ入った顔にたまらず両腕を彼の首に巻き付けた。それを合図にサスケの舌はよりナルトの奥を探り快感を引き出そうとナルトの舌を自分のそれにこすりつける。
「…………あ」
ナルトの首の根を支える左手が同時に耳の後ろを優しく何度も撫でた。くすぐったさに身じろぎした時、 今の口付けで立ち上がりかけていたナルト自身がサスケの右手にやんわりつかまれる。
「……サスケ?……まだすんの?」
ナルトは間近にあるサスケの顔を覗き込みながら問いかけた。先ほど自分は達したわけで、次はナルトの太腿やそこここにあたるサスケの誇張したものを、さて自分はどうしたらいいのかと、恥ずかしいと思いながらも考えていたナルトであった。上手くできる自信は到底なかったが、それでもサスケが望むのであればできることはしてやりたいと思う。
ナルトは今はひとつになってしまったサスケの黒い瞳を見つめた。
こうやってサスケの重みを受けて熱を感じていると、ナルトのためだけに彼は自身の目を捨て去ってしまったように思えてしまって。どうしてだか、サスケの背中に腕を回して離したくないと思ってしまうのだ。
耳元に乱れた呼吸を感じて、ナルトの鼓動はどくんと一度大きく跳ね上がる。
「……まだ終わってねぇに決まってるだろーが、ウスラトンカチ……」
かすれた声でささやかれてナルトはたまらず目をつぶった。
「オレってば……どうしたらいいんだよ?」
「てめーはただ感じとけばいい」
「でもサスケは?……あっ……!」
先ほどの愛撫で濡れそぼっていたナルトの肛門にサスケの指が触れた。
「サ、サスケッ?」
ゆるく円を描くようにそこを撫でられてナルトは息をのむ。
「ま、待て待て!サスケ!どどどこ触ってんだッ?」
「どこって、てめーのケツだろーが」
「あ、こ、ここに入れんの?え、い、今ッ?」
ナルトのその言葉にサスケの眉が潜められる。
「今だよ」
話しながらも動かす指は止めず、サスケは柔らかくなったナルトのそこにぐいっと中指を押し入れた。
「う……あっ……!サスケッ?ちょっ待てって!」
ナルトは異様な感触に鳥肌が立ちそうになり、どうにか逃げようと体をひねる。
「ム、ムリムリムリムリっ!!そんなとこに入るワケねぇってばよっ!あっ……っ!サスケ!」
「ムリじゃねぇ」
ぐっと奥まで指を突き立てられ、余りの圧迫感にナルトは声を上げた。
(き、気持ち悪いぃ……!)
一本目はそう痛みを感じることなくナルトの中へとおさまった。中を探るように擦られてもなんとか耐えていられた。さらに指を増やされた時には、さすがにサスケの指を拒絶するかのようにそこはかたくなだった。下肢の間にとろりとしたものを感じてナルトは身を震わせる。
すぐあとに、ぐいと穴を広げられる痛みを感じてきつく目を閉じた。
サスケがここに入りたがっているらしいことは分かったが、こんなきついところに入れて果たしてサスケは気持ちがいいのか。それより自分はどうなってしまうのだろう。
ナルトはあの幻術でサスケに抱かれたことを思い出していた。痛みの中に混じる違和感は確かに快感と呼べるものなのかもしれないけれど、あれは結局幻術だったわけで、自分は影分身から記憶を受け取ったが、経験をしたわけではない。
「ナルト、おまえん中すげぇ熱くて……キツイ」
「んん!あ……ああ………!」
サスケの指がある一カ所を押した途端に、痺れるような快感が一気に走り抜け、自身の先端から漏れるような感覚にナルトはぎゅっと目をつぶる。
「そこっ、ヤダ!サスケ……!」
「ここがいいんだろ?」
「っ……!」
ナルトが声をあげたところを的確にサスケはねらう。しつこく擦られてナルトは両手で口を塞ぎあられもなく上げてしまいそうになる声は抑えた。
しかし今まで感じたことのない過ぎた快感にがくがく震える体はどうしようもなかった。足を広げさせられたがナルトに抵抗の意志はすでにない。ひくりと喉が鳴り、そこにサスケの舌が這わされた。口を押さえていた手が取り払われ、ナルトの声を吸うようにサスケが口づけてくる。
舌があたえられたところで、さらに指が増やされた。抑えきれず上がった声がサスケの口腔に吸い取られる。無意識に楽な姿勢をとろうと腰が浮きあがり背骨がざらつく地面にこすれて痛んだが、それもすぐに気にならなくなった。ナルトのそれを手伝うように片足を持ち上げたサスケが、容赦なくナルトの感じる中ばかりを突いてきたからだ。
「あ…あ…あ…あッ……!」
たまらずナルトは首を振ってサスケの唇から逃れると動く指に合わせて声を上げた。感じ入ったナルトの表情をサスケは見下ろす。
サスケは一端指を引き抜くと、快感に潤んだ空色の瞳が自分に焦点が合うまで待ち、ナルトの額にかかる髪を優しくすいた。
「オレはおまえと繋がりたくて仕方がねぇ」
サスケは熱に浮されたように、低くも響く声でそう言った。黒い瞳が細められる。
「サスケ……」
「てめーとひとつになりたくて仕方ねぇんだよ……!」
ナルトの首筋に埋もれるようにしてサスケは額を押し当てた。
乱れる呼吸はまだ落ち着かず、打ち付ける鼓動はもうどちらのものか分からないほどに近くて、そして鳴り止まない。サスケの想いが流れて来るようだ。彼に巻かれた包帯がナルトの頬を掠める。
サスケの覚悟に罪悪感はなく、ただ誇らしかった。 うちは一族特有の眼の価値は見出だせなくても、彼の眼には価値を見出だせる。
ナルトが口を開こうとした時、
バーンと大きな音がして、すぐに自分とサスケの名を呼ぶサクラの声が聞こえた。
とっさにサスケは近くにあったシーツをつかみ自分達に向かって引きずり落とす。ナルトの耳元でサスケの舌打ちが聞こえた。そしてすぐに、
「服整えろ」
と、あからさまに不機嫌なサスケの声が続く。
「なっ、元はと言えばサスケがっ」
「バレたきゃそのままでいるんだな、ドベ」
その言いようにカチンときたナルトだったが、今はそれどころではなかったと、思い切りよくはだけられていた服を慌てて整えた。
「覚えてろってばよ!」

ナルトは苦し紛れに悪態を吐く。
「当たり前だ、てめーがオレの口ん中でイッ」
「それ以上言うなってばよー!」
身拵えもそこそこにナルトは先ほどの媚態を吐露しようとしたサスケの口を塞ぎにかかった。もちろん顔を真っ赤にさせて。狭苦しいシーツの囲いの中で、二人は春色の少女に見つけられるまで転げ回った。


「ナルトー!」
反対側の壁にあたるまで勢いよく扉を開けた少女は、白いシーツの下で喧嘩のように取っ組み合いのようにじゃれあう二人を見つけると、顔を出したサスケに向かって、
「お帰り、サスケ君!」
と桜色の髪を風に遊ばせて、眼の縁を赤くしたサクラは満面の笑みでそう言祝いだのだった。





END


イラスト:B+_未理様


あのままではサスケがあまりにも不憫、というか何というか。。。
ってコレの方が生殺しだったかしらっ?!




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